Q.相続で取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合には、課税の特例を何か受けることができるのでしょうか?

 

A.譲渡対価の全額を譲渡所得の収入金額とする特例や、相続税額を取得費に加算する特例の適用を受けることができます。

1.譲渡対価の全てを譲渡所得の収入金額とする特例
個人が株式をその発行会社に譲渡し(金融商品取引所が開設する市場での取引以外です)、発行会社より対価として金銭等の資産が交付されて、その交付された金銭の額と金銭以外の資産の価額を合わせた額が、その発行会社の資本金等の額のうちでその交付の基因になった株式に対応する部分の額を上回る場合には、その上回る部分の額は配当所得として取り扱われることになり、所得税が課されます。
ただし、相続か遺贈によって財産を得て相続税を課された者が、相続の開始日の翌日より相続税の申告書の提出期限の翌日以降3年が経つ日までの間に、相続税の課税対象とされた非上場株式をその発行会社に譲渡したときには、その者が発行会社より株式の譲渡の対価として交付された金銭の額が、その発行会社の資本金等の額のうちでその譲渡株式に対応する部分の額を上回っても、その上回る部分の額は配当所得として取り扱われず、発行会社より交付される金銭の全てが株式の譲渡所得に関わる収入金額ということになります。それゆえ、このときには、発行会社より交付される金銭の全てが非上場株式の譲渡所得に関わる収入金額とされ、その収入金額より譲渡した非上場株式の取得費と譲渡にかかった費用を差し引いて算出した譲渡所得金額の15%に当たる額の所得税が課されます。
ちなみに、平成25年より平成49年までの間は、所得税のほかに、復興特別所得税(各々の年分の基準所得税額の2.1%)の申告と納税を行うことになっています。
上記の譲渡対価の全てを譲渡所得の収入金額とする特例の適用を受けるためには、その非上場株式を発行会社に譲渡するまでに、発行会社経由で「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」を、発行会社の本店か主たる事務所の所在地の所轄税務署長に対して提出しなければなりません。

2.相続税額を取得費に加算する特例
 上記1の非上場株式の譲渡による譲渡所得金額を算出するに際して、その非上場株式を相続か遺贈によって得た際に課税された相続税額のうちでその株式の相続税評価額に対応する部分の全てを取得費に加算し、収入金額より差し引くことが認められています。なお、加算される金額は、この加算を行う前の譲渡所得金額が上限とされています。
 この相続税額を取得費に加算する特例の適用を受けるためには、確定申告を行わなければなりません。そして、確定申告書に次の書類を添えることが必要です。
・相続税の申告書の写し(第1表、第11表、第11の2表、第14表、第15表)
・株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
・相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書(この計算明細書を用いて、取得費に加算される相続税額を算出できます。)

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