Q.出資持分の定めのある社団医療法人の理事長の出資持分について、その評価を下げるためのポイントを教えてください。
A.出資持分の定めのある社団医療法人の出資持分の評価を下げるために重要なことは、その医療法人の純資産価額を引き下げるための手段を早めに計画しておくことといえます。
1.出資持分の評価の引下げ
出資持分の定めのある社団医療法人の出資持分は相続財産となり、出資持分の評価は「取引相場のない株式」の評価方法に準じて行うことになっています。その評価額については基本的に、税金を支払った後の利益が蓄積されて内部留保が厚くなるにつれて、評価額が上がっていくこととなります。
法人の純資産価額を引き下げることは、出資持分の評価を引き下げるのに有効です。
2.純資産価額の引下げ
純資産価額を引き下げるための主たる方法は、次の通りです。
(1)役員退職金の活用
理事長が後継者である長男にその地位を譲ることによって、法人への貢献度や在職期間、類似法人における退職金の支給状況等に照らして、理事長に対して退職金を支給します。
役員退職金を損金算入することで、出資持分の評価を引き下げることが可能です。
(2)生命保険の活用
理事長の後継者である長男を被保険者とし、医療法人を契約者、受取人、保険料負担者とする生命保険に加入します。
生命保険契約は、解約返戻金の額によって評価されます。解約返戻金は支払保険料より少額となるのが通常ですので、純資産評価額を引き下げることができます。
(3)土地や建物等の取得
不動産の相続税評価額は、通常、売買時価より低くなります。したがって、土地や建物等の取得価額と相続税評価額の差異を利用します。
銀行から借入をすれば借入利息が増加し、建物を購入すれば建物の償却費が増加する等、収益性も低くなり、大幅に評価が下がる可能性もあります。
ただし、課税時期前3年以内に取得した土地や建物等の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額により評価するものとされています。したがって、取得価額と相続税評価額の差異の効果を享受できるのは、3年が経過してからということになります。