私の家は、昔から代々続く地主であり、父が所有している財産に占めている不動産の割合につきまして、非常に高くなってきております。 将来の相続に向けまして、何か対策は存在しているのでしょうか?

 

<解答>
 状況によってさまざまなケースが考えられますが、たとえば下記のような方法が考えられるでしょう。

(1) 売れるものは、あらかじめ売却しておくこと。
 地主の方は、代々土地の相続を行ってきたこともあり、このような土地には特別な思いがあって、なかなか売却に踏み切ることが不可能であるという方もいらっしゃるでしょう。しかし、土地には目に見ることができない「相続税」という借金がぶら下がっていることになります。相続財産に占めている不動産の割合が高くなってきており、金融資産が少ない場合につきましては、納税資金の目的のために思い切って土地を売ってしまうのも1つの手段となるでしょう。相続が発生した後に、売却を行おうと考えていたとしても、いざとなったら売却先が見つけることが不可能になってしまい、納税が不可能になってしまうことも考えられるでしょう。
 この場合におきましては、土地を売却した父につきましては、譲渡にかかっている住民税・所得税がかかることになるでしょう。税率につきましては、その土地の所有期間によって異なることになるでしょう。原則としまして、譲渡した年の1月1日におきまして、所有期間が5年を超える場合におきましては、長期期間に該当することになって、20パーセント(所得税15パーセント・住民税5パーセント)の税率となりまして、5年を下回る場合につきましては、短期譲渡に該当することになって、39パーセント(住民税9パーセント・所得税30パーセント)の税率となるでしょう。
 また、土地を引き継いだ相続人が譲渡した場合につきましては、相続開始から3年と10ヶ月以内の譲渡の場合につきましては、相続のときに支払った相続税のうち、土地に対応している部分の金額につきましては、取得費に加算されることになりまして、譲渡所得が少なくなるようです。また、長期と短期の判定におきましては、相続を行った日から譲渡日までで所有期間を判定するわけではなく、亡くなった父の取得日を引き継ぐこととなることに留意しなければならないでしょう。

(2) 借入金によって賃貸物件を建築すること。
 借入金によって建物(賃貸物件)を建築することになりますと、一般的には、評価引き下げとなるようです。これにつきましては、相続税における土地と建物の評価について、時価や建築価額ではなく、土地につきましては路線価、建物につきましては固定資産税評価によって評価することとなるためのようです。
 さらに他人に、建築を行った物件を賃貸することになりますと、地主の権利につきましては制限されることになってしまいますので、さらに一定の減額があるようです。以下に手持ち資金をもとに賃貸建物を建築した方の例を紹介します。

【賃貸建物の場合】
預金:2000万円×0.7→<建物を建築>固定資産税評価1400万円(時価2000万円)×(1—0.3)→貸家980万円。
※ 建物を賃貸すると、貸家の評価になるようです。
※ 固定資産税評価は、建築価額の約7割程度となるようです。

【賃貸物件敷地の場合】
預金:2000万円×0.8→<土地の取得>自用地路線価評価1600万円(時価2000万円)×{1—(0.7×0.3)}→貸家建付地1264万円。
※ 貸家の敷地である土地の評価については、貸家建付地評価となるようです。
※ 路線価は、時価の8割程度となります。

相続税評価額合計4000万円→(1756万円の評価減)相続税評価額合計2244万円。

 この場合においては、もともと4000万円であった預金のうち、2000万円で建築を行った建物につきましては、固定資産税評価によって評価されることになって、約1400万円となるでしょう。建物の固定資産税評価につきましては、一般的には、建築価格の50〜70パーセント程度となりまして、さらにこの建物を他人に賃貸することになりますので、借地権割合の30パーセントが減額されることになるでしょう。
 土地につきましては、路線価によって評価されることとなるでしょう。この路線価につきましては一般的に時価(公示価格)の約80パーセント程度となっております。したがいまして、2000万円で購入を行った土地であったとしても相続税評価額は約1600万円となるでしょう。さらに、この土地の上に存している建物の賃貸を行っていますので、この土地につきましては貸家建付地として評価されることにありまして、借地権割合が70パーセントの場合において、70パーセント×30パーセント(借地権割合)=21パーセントが減額されることになるでしょう。
 このようにしまして、上記の例の場合におきましては、1756万円評価額が下がることになるでしょう。借入金によりまして、土地建物を購入した場合におきましては、借入金の分だけさらに相続財産を圧縮できる効果が期待できるでしょう。

(3) 小規模宅地等の特例を活用すること。
 被相続人が住んでいた宅地などを同居の親族等が相続することになりまして、引き続き居住することになりまして、保有する場合につきましては、特定居住用宅地等に該当することになり、240平方メートルまで80パーセントの減額を受けることが可能となるでしょう。しかし、相続人の中には、すでに結婚し、親とは同居することはなく、別の場所に一軒家を持って暮らしている方もいらっしゃるかもしれません。
 この場合におきましては、その方は同居親族にもなることはなく、3年以内の家なき子にも該当しないことになるため、特定居住用の小規模宅地等の特例を受けることが難しくなってしまうでしょう。
 そこで自宅を改修することにして、自宅兼賃貸併用物件を建築する方法が存在しております。つまり、自宅において特定居住用宅地等の減額の適用が不可能になってしまうのであれば、せめて自宅兼賃貸物件にすることによって、貸付部分につきましては貸付事業用宅地等の減額を適用させようとするものになるでしょう(事業継続・保有継続物件が存在しています)。この場合につきましては、借入金によって建築することによってさらに相続財産をより圧縮する効果があるといえるでしょう。
 上記の方法につきましては、積極的に資産運用をする方法といえる。他に、例えば3年以内の家なき子に該当することがないのであれば、相続人である息子が、自宅を賃貸をすることになりまして、貸家暮らしをしたと仮定します。その後、3年の月日が経過した後に相続が発生した場合につきましては、3年以内家なき子に該当することとなります。(被相続人に配偶者や同居親族がいない場合)。このように、生前から小規模宅地等の特例の要件整備をすることも相続対策の1つとなります。

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