相続財産については、預貯金が少なくなっており、納税額には不足してしまいます。 また、私自身収入があまり存在していなく、分割払いでも難しい状況になっています。何か良い方法はないのでしょうか?

 

<解答>
 相続税の物納制度によって、相続された財産そのものを納税に充てることが可能になります。

<解説>
(1) 相続税の納税方法
 相続税は原則としまして、現金によって一括納付する必要があると考えられています。ただし、現金一括納付が困難な場合につきましては、延納制度によって、数年間に分割しまして相続税を支払うことが可能になります。さらに、延納制度によりましても相続税を金銭で納付することが難しい場合につきましては、物納制度によって、金銭以外の物によって相続税の納税をすることが可能になります。

(2) 物納可能額
 納めるべきである相続税額から、まずは現金納付を検討することにし、次に延納可能額を検討して、その2つの段階を経まして、残った金額についてが物納が可能である金額であるということになるでしょう。

(一) 金銭で一時に納付が可能である金額
 金銭で一時に納付が可能である金額については、現金・預貯金のほかにも、有価証券等の換金が容易である財産を含めまして、そこから納税者、そしてその家族の3ヶ月分の生活費や事業の1ヶ月分の運転資金などを控除することにして、計算することになります。なお、金銭で一時に納付が可能である金額については相続によって取得できた預貯金等のほかにも、相続人の固有の預貯金等につきましても合わせて計算することになります。
(二) 延納許可限度額
 納税者の年間収入金額から年間の生活費や事業経費等を差し引くことになった金額を年間の納付可能資金とみなすことになります。この1年間の納付可能資金に延納期間を乗じまして、計算したものについてが延納許可限度額となるようです。

(3) 物納可能財産
 物納に充てることが可能である財産については、種類そして順位が決められているようです。国が、物納によって納められた財産を現金化することにし、相続税に充当することになります。そのため、物納財産につきましては換価が可能である財産でなければなりません。すぐに換価が不可能である財産に関しましては、物納が不可能である、もしくは条件付で一定の場合に限りまして、物納が認められることになります。

(一) 管理処分不適格財産
 管理処分不適格財産とは、物納に充てることが不可能になっている財産である。管理処分不適格財産には下記のようなものが存在しています。他者の権利が及んでいたり、現状のままでは処分することが不可能とされているような財産が該当することになります。
・ 抵当権の目的となっている不動産、差し押さえがなされている不動産。
・ 有害物質によって汚染されている不動産。
・ 譲渡制限株式。

(二) 物納劣後財産
 物納劣後財産とは、他に物納に充てることができる財産が存在しない場合に限りまして、物納に充てることが可能となる財産となっています。物納劣後財産には下記のようなものが存在しております。処分することは可能となっておりますが、買い手がつくことが難しかったり、売却がはかどらなかったりする財産が該当することになります。
・ 建築基準法に違反していて建築されました建物及びその敷地内。
・ 接道条件を満たすことができない土地。
・ 事業を休んでいる法人にかかっている株式。

(三) 物納財産の順位
 物納財産につきましては、下記の順番によって物納に充てることが可能になっています。
第1順位 1、地方債、国際、不動産、船舶。
     2、1、のうち劣後財産。
第2順位 3、株式、社債、証券投資信託。
       または貸付信託の受益証券。
     4、3、のうち劣後財産。
第3順位 5、動産。

(4) 物納検討の際のポイント
(一) 物納の流れ
 物納を行う場合につきましては、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)までに、提出物として、物納申請書を作成し、所轄税務署に提出しなければなりません。その後、原則としまして、3ヶ月以内に物納の可否が決定することになります。
(二) 必要な手続
 物納をする目的のためには、不動産であれば測量を行い、隣地との境界を確定させる等の条件整備を行わなければなりません。その目的のためには、時間がかかることになってしまいますので、相続税の現金による納税が困難な場合につきましては、早く納税方法の検討を行い、物納を行う場合につきましては、すばやく条件整備にとりかからなければなりません。
(三) 売却との比較検討
 物納財産については、原則としまして相続開始時の相続税評価額によって、収納されることになります。もし、それよりも高い化学によって売却が可能である場合につきましては、物納ではなく売却を行いまして、その売却代金をもちまして、現金納付を行うことも考えられるでしょう。売却を行って儲けが出た場合につきましては、譲渡所得としまして所得税、そして住民税が課されることになってしまいますが、相続税の申告期限から3年以内に相続財産を譲渡する場合につきましては、「相続税額の取得費加算」の適用を受けることが可能となりまして、譲渡所得を低く抑え、所得税・住民税の負担を軽減することが可能になります。
 また、非上場株式をその発行会社に譲渡してしまった場合につきましては、原則としまして譲渡所得の他にも「みなし配当」課税が行われまして、最高で所得税・住民税合わせての50パーセントの税金が課されることになっていますが、相続によって取得できた非上場株式を相続税の申告期限から3年以内にその発行会社に譲渡した場合につきましては、この「みなし配当」の適用はありません。かつ、20パーセントの課税で済むことになります。
 物納を検討する場合については、物納の条件整備にかかる費用等も考慮した中で、売却を行った場合の手取り額との比較を行いまして、納税方法を決定することが大切なこととなるでしょう。

Copyright(c) 2014 不動産の税金に困ったら・・・ All Rights Reserved.